顔汗がひどい 病院

顔汗がひどいとしても、ほとんどの人は病院に行こうとは思いません。実際に、頭や顔の多汗症で病院にかかる人は、有病者の6%ほどしかいないそうです。

でも、日本では頭部・顔面多汗症は20人にひとりに近い割合で発症します。発症年齢は平均すると21歳ごろで、不安症、対人恐怖症を併発しやすく、生活の質(QOL)が著しく落ちます。

多汗症には、日本皮膚科学会による診断基準と診療ガイドラインが作成されていて、病院にいけば重症度に応じた治療が受けられます。病院でどんな治療が受けられるのかを知っておくと、最善の顔汗対策を選ぶために役立つと思います。

顔汗がひどいなら病院へ

顔汗で悩んでいるほとんどの人は、体質の問題なので仕方がないとでも思っていて、顔汗で病院にかかるという発想はないようです。

でも、その顔汗は病気かもしれません。

多汗症は、全身または身体の特定の部位に、生活に支障をきたすほど多量に発汗する病気です。他の病気や傷害が原因になっているものを続発性多汗症、原因が特定できないものを原発性多汗症といいます。

続発性多汗症の原因になるのは、結核などの感染症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や褐色細胞腫などの内分泌代謝異常、神経疾患による発汗機能亢進、脳梗塞の後遺症、脊髄損傷による自律神経障害などがあります。

一方、原発性多汗症は感情の動きが影響する精神性発汗で、遺伝的な要因もあると考えられています。原発性多汗症のうち、頭と顔、手のひら、足の裏、脇の下(腋窩)など身体の特定の部位に異常な発汗があるものを、原発性局所多汗症といいます。

原発性局所多汗症には、日本皮膚科学会が診断基準と診療ガイドラインを作成して、日本国内のどこでも重症度に応じた診療が受けられるようにしています。

>>>原発性局所多汗症診療ガイドライン2015 年改訂版

ガイドラインでは「日常生活に支障をきたす程の大量の発汗を生じる状態」を多汗症としています。

日常生活に支障があるかどうか、は本人がどう感じているかによります。本人が多汗で悩んでいるのなら「日常生活に支障がある」ことになります。

病院では発汗検査を行い、問診によって診断を確定しますが、「原因不明の過剰な発汗が6ヶ月以上」続いて、以下の6つのうち2つ以上があてはまると、原発性局所多汗症と診断されます。

【多汗症の診断基準】

  • 最初の発症が25歳以下
  • 対称性に発汗する(左右対称になる)
  • 睡眠中には発汗しない
  • 1週間に1回以上の多汗のエピソードがある
  • 家族に同じ症状のある人がいる
  • 日常生活に支障をきたしている

上記の診断基準に思い当たることがある人は、一度病院を受診してみて下さい。

怖いのは、顔汗が続発性多汗症の症状である場合です。原因が何なのか、どんな治療が必要になるのかは医師でないと判断できないし、続発性多汗症を治すには当然のことながら、原因となる病気、傷害の治療・改善が重要です。

顔汗の原因が続発性かそうでないかを確認するためにも、一度病院を受診することをおすすめします。

原因が多岐にわたるので、何科を受診すればいいか迷うかもしれません。かかりつけのお医者さんがいるなら、そこで診てもらうのがいいでしょう。とくにホームドクターがいなければ、通いやすい皮膚科がいいと思います。

原発性局所多汗症の治療

原発性局所多汗症診療ガイドラインでは、発汗する部位ごとに標準的な治療方法を示しています。頭や顔と手のひら、足の裏、腋窩では異る選択肢が提示されています。

「標準的な」というのは、ガイドライン作成時点で専門家が有効と考え、科学的な裏付けがある方法を示しているということです。医師が患者さんを診察した上で、患者さん個々の状況・事情を汲んで示す処方や治療方針がガイドライン通りになる、ということを意味するわけではありません。

ただ、患者さんに特別考慮すべき事情がなければ、ふつうはガイドラインに沿った治療方法からはじめて、経過観察をすることになるでしょう。

発汗には、体温上昇を抑えるための温熱性発汗、緊張やストレスが引き金をひく、いわゆる「冷や汗」といわれる精神性発汗、そして辛いものや酸っぱいものを食べたときなどに発汗する味覚性発汗があります。

いずれも身体の中では、脳の発汗中枢から発せられる「汗をかけ」という司令が、交感神経を通じて汗腺(エクリン腺とアポクリン腺)に伝えられ、司令によって汗腺でつくられた汗が汗孔と毛穴から分泌される、ということがおこっています。

温熱性発汗の司令塔(発汗中枢)は脳の視床下部にあり、精神性発汗の司令塔は大脳前頭葉にあることがわかっているそうです。

必要以上に発汗する、不必要に多量の汗をかいてしまうのは、汗をかく仕組みがどこかで誤作動しているからです。そこで「汗をかく仕組み」のどこかを止めるか、誤作動を修正すると、多汗症の治療になります。

原発性局所多汗症診療ガイドラインのベースは西洋医学にあり、汗をかく仕組みを妨げる方法が治療法として示されています。対症療法的な治療法ともいえると思います。

汗をかく仕組みの誤作動を修正する方法としては、漢方薬の処方があげられます。東洋医学がベースにあるため原発性局所多汗症診療ガイドラインからは外れていますが、長年の実績がある治療法です。

西洋医学では原因不明とされる原発性局所多汗症ですが、漢方の目で見れば因果関係があり、汗をかく仕組みが誤作動する因を解消するために、適切な漢方薬が処方されます。

顔汗を止める治療法

原発性局所多汗症診療ガイドラインでは、頭部・顔面多汗症の治療法には下図の選択肢があります。

原発性局所多汗症診療ガイダンス‐頭部・顔面多汗症診療アルゴリズム
出典:原発性局所多汗症診療ガイドライン2015 年改訂版(日本皮膚科学会)

顔汗治療として第1選択となっているのは、塩化アルミニウム溶液の外用と内服薬のプロ・バンサインです。

塩化アルミニウム溶液

塩化アルミニウムは、汗孔や毛穴にフタをして汗がでないようにします。保険適用外ですが、手のひらや足の裏、腋窩多汗症で第1選択とされる治療方法です。

顔用にも第1選択となっていますが、ガイドラインには「頭部顔面多汗症についても他に有効な治療があまりないため第1選択であるが,刺激皮膚炎や粘膜への外用を避けることが必要である」と注釈が記載されています。

塩化アルミニウム溶液は、就寝前に患部に塗って眠ると、汗孔や毛穴がフタをされて汗が出なくなり、いずれ汗腺の分泌機能が失われるとされています。日中の使用も可となっていますが、就寝時に使うのが基本的な使用方法で、継続することで効果が期待できます。

手足や腋窩に処方される塩化アルミニウム溶液が20~50%の濃度なのに対して、顔用には10~20%の濃度で使われます。

プロ・バンサイン

プロ・バンサインは、発汗の司令が交感神経から汗腺に伝わらないようにする薬です。

発汗の司令は、交感神経の先端にあるシナプスから分泌される神経伝達物質アセチルコリンが、汗腺の受容体にくっつくことで伝わります。

プロ・バンサインは汗腺の受容体に結合して、アセチルコリンが受容体と結合する余地をなくします。アセチルコリンが結合できないと、司令が汗腺に伝わらないので発汗が抑制されます。アセチルコリンの作用を妨害することから、プロ・バンサインは抗コリン薬とよばれています。

抗コリン薬が頭部・顔面多汗症の第1選択の治療方法となるのは、「他に治療選択肢が少ない」という事情もあるようです。

手のひら、足の裏の多汗症には、直流電流を流した水道水に手足を浸す「イオントフォレーシス」という選択肢があるので、プロ・バンサインはガイドラインの選択肢に入っていません。腋窩多汗症も塩化アルミニウム外用が効果的なので、内服療法はわざわざガイドラインで推奨する理由がないようです。

内服薬は、有効成分が血中に溶けて全身にまわるため、効果も全身に及びます。そのためプロ・バンサインは全身多汗症の治療薬として使われています。逆に、汗を止めたい部位だけに効かせることができないので、局所多汗症への適用には「タスキに長し」という面があります。

精神性発汗だけでなく、温熱性発汗にも作用するため、常時使用というよりも、必要なときに汗が止まるようにタイミングを考えて飲むといいようです。服用後に制汗効果が出るまでの時間が読めることから、プロ・バンサインを「お守り」と表現する患者さんもいます。

ボトックス注射

塩化アルミニウム外用とプロ・バンサインで十分な治療効果があがらない場合は、A型ボツリヌス菌毒素製剤局注が次の選択肢となります。

一般にボトックス注射と呼ばれる療法です。アセチルコリンの分泌を抑制するので、発汗の司令が汗腺に伝わらなくなります。アセチルコリンの作用を邪魔するということでは抗コリン薬に似ていますが、効果があるのは注射した場所の周辺です。局所多汗症には好都合ですね。

制汗効果は半年ぐらい持続します。ただ、顔汗の場合は保険が効かない自費診療になります。

胸部交感神経遮断術

最後の選択肢として示されているのが、胸腔鏡下胸部交感神経遮断術です。交感神経が脳の発汗司令を伝えないようにする手術で、顔汗を止める効果は顕著です。

一方で、代償性発汗といって他の特定の場所で多量に汗をかくことになる合併症がほぼ確実に起こるため、顔汗を止めるとしてもQOLを必ずしも改善しないリスクがあります。

塩化アルミニウム外用、プロ・バンサイン、ボトックス注射で治療効果がなく、症状の重い人が、代償性発汗のリスクを理解したうえで強く希望する場合に限って、交感神経遮断術は選択してもいい、とされています。

以上の4つが頭部・顔面多汗症の治療方法として、日本皮膚科学会のガイドラインに記載されていますが、原発性局所多汗症が異常な精神性発汗であることから、ガイドラインでは心理療法・精神療法によるサポートについても触れています。

心理療法が何科で受けられるかですが、大きな病院ならば心療内科あたりが該当すると思います。多汗症を発症すると不安症、対人恐怖症を併発しやすいので、ときには専門家の力を借りて精神的な障害を取り除くことも必要になるかもしれませんね。

まとめ

原発性局所多汗症診療ガイドラインには、病院に顔汗の悩みを相談したときに受けられる最善の対策が記載されています。

残念ながら、多汗症の治療は手のひら、足の裏や腋がメインです。顔や頭、髪という常に人の目に触れる特殊な部位の汗の悩みに照準を合わせた対策は、治療レベルでは開発されていません。

でも最近になって、化粧下地として使える顔用の制汗剤が開発されて、少し美容寄りのアプローチから顔汗対策ができるようになってきました。多汗症の治療とあわせて使えますし、日中のQOLの改善にかなり役立つと思います。

こちらの記事に顔用に開発された制汗剤を紹介していますので、興味のある方はぜひお読み下さい。

関連記事>>>顔汗のひどい人が対策に使えて化粧下地にもなる薬用制汗ジェル

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