制汗剤

制汗剤は汗を完全に止めるわけではありません。

でも長期にわたって使い続けると、汗を分泌する汗腺の活動を休眠状態にしていきます。

この記事では、制汗剤の有効成分が効果を発揮する仕組みや、体への影響について書いています。

制汗剤の有効成分

市販の制汗剤は多くが制汗シートなど一部の商品をのぞけば「腋臭(えきしゅう)、皮膚汗臭、制汗」に効く医薬部外品です。

顔用は「肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。」という効果効能のある薬用化粧品として、化粧下地や日焼け止め、乳液、ルースパウダー、コンシーラーとして販売されています。

法律上、効能効果を謳えるのは医薬品と医薬部外品に限られます。

医薬部外品とは

≪医薬部外品≫
効果・効能の認められた有効成分が含まれていますが、人の体に対する作用が穏やかなもので、日常的な不快感の緩和を目的とする育毛剤、入浴剤などが該当します。従来の効能に殺菌や消毒効果を強めた「薬用化粧品」も、化粧品ではなくここに含まれます。

出展:タケダ健康サイト

医薬部外品の制汗剤には、主に以下の2種類の効果のある有効成分が配合されています。

制汗効果のある成分
クロルヒドロキシルアルミニウム、焼ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)、フェノールスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛

殺菌効果のある成分
イソプルピルメチルフェノール(シメン-5-オール)、ベンザルコニウム塩化物

医薬品が「治療」を目的としているのに対して、医薬部外品は「防止・衛生」を目的とするものです。

医薬品が汗を止めるために使われるのに対して、市販の制汗剤は主にニオイ対策のニーズに合わせて作られています。汗を止めるのが目的であれば、制汗剤より多汗症治療の外用薬として使われる塩化アルミニウム溶液の方が効果があります。

制汗剤の仕組み

汗は汗腺が分泌をして、汗孔から肌の表面に流れ出ます。

制汗剤は、汗孔にフタをして汗を止める、という単純な仕組みで汗を抑えます。そして長期にわたって汗を抑え続けると、廃用性萎縮によってやがて汗をかかなくなります。

足を骨折して治療中にギブスをしていると、骨がくっついたころに足の筋肉がおちて細くなりますよね?

これも廃用性萎縮の一例です。人の身体の機能は、使わないと衰えるようになっているのですね。

汗を出せなくなった汗腺は、廃用性萎縮によって休眠状態になっていきます。

治療薬として使われる塩化アルミニウム溶液も、同じ仕組みで汗を止めていきます。

医薬品の塩化アルミニウムと医薬部外品に配合されている有効成分の差は、汗を抑えるフタの強さのちがいです。

汗を止める力が強いと、肌への刺激も強くなります。塩化アルミニウム溶液が最強ですが、制汗剤に配合されているアルミニウム系の成分も制汗力は強めで、肌への刺激も強めです。

そのため、比較的肌の強い脇などに使う制汗剤はアルミニウム系の成分が使われて、肌のデリケートな顔用には効きめも刺激も穏やかな亜鉛系の成分が配合されています。

制汗剤の体への影響

制汗剤の成分にアルミニウムが含まれているため、制汗剤は健康に悪影響があるのではないかと心配する向きがあります。アルミニウムが皮膚から体の中に入って、経皮毒になるという話です。

脇に制汗剤を使いすぎると乳がんになる、という極端なことをまことしやかに語る人もいるようです。

しかし結論からいうと、制汗剤の成分は体の中には入りません。経皮毒として蓄積されて、何かよくない病気の原因になることはないのです。

アルミニウムは角質層にしか入らないことが解明されています。角質層はいわゆるターンオーバーによって常に再生され入れ替わっていくので、アルミニウムも角質といっしょに体外に排出されます。

これを明らかにしたのが、2015年に発表された日本の若手研究者の論文です。

>>>科研費助成事業 研究成果報告書「多汗症に対する外用治療薬の効果と作用機序の解明」

この論文では、塩化アルミニウム溶液の成分が皮膚の角質層までしか浸透せずに汗を抑える働きをすることが報告されています。初めて目に見えるカタチで、制汗成分として使われるアルミニウムの毒性を否定する根拠を与えたものです。

制汗成分は、アメリカで1910年代にはすでに塩化アルミニウムが使われていた記録があります。約50年まえのアメリカの市販の制汗剤の有効成分は、現在の日本で市販されている制汗剤とほぼいっしょです。

もっと遡ると、古代ローマ時代にはすでにミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)が制汗剤として利用されていたそうです。

このように長年にわたって使われ続けている制汗成分は、どのように働いて汗を止めるかについてももちろんわかっていました。

ただ、理屈はわかっているのですが、実際に有効成分が働くところを見た人は誰もいなかったのです。それは、微小な世界を観察する技術がなかったからです。

そのため、医学界では常識とされている制汗成分の作用機序(効き方)は、厳密には仮説にとどまっていました。

しかしここ10年程度で一気に進んだ、遺伝子解析技術と電子顕微鏡など観察技術の革新が、ありのままに制汗成分の動きを観ることを可能にしました。

上記の論文は、仮説だった塩化アルミニウムの作用機序に確証を与えた点で、画期的な意義がありました。そして、アルミニウムが経皮毒になるという妄言を否定する根拠も与えました。

まとめ

いかがでしたか?

制汗成分は、経皮毒として重大な病気を引き起こすようなことはありません。

しかし、肌への負担はゼロではありません。全身に制汗剤を使って汗が出にくくなると、温熱性発汗など本来流すべき汗も止めてしまいます。

それはそれで問題があり、熱中症になるリスクが高まったり、汗の質を悪くしてニオイを強くすることもあるようです。だから、使いすぎないようにして下さいね。
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