顔汗がひどい 薬

顔汗がひどいときの薬は、多くの病院ではまず外用薬として塩化アルミニウム溶液、内服薬としてプロバンサインが処方されます。

どちらも「原発性多汗症診療ガイドライン」というお医者さんが診療の参考にするガイドラインで第1選択とされている薬です。

それぞれどんな薬なのか、最近は薬剤師さんがわかりやすく説明してくれるようになりましたが、ここでは薬剤師さんとは別の角度から、どんな薬なのか深掘りをしてみたいと思います。

顔汗 塩化アルミニウム

塩化アルミニウム溶液は、汗の出口を塞いで発汗を抑える目的で、患部に塗って使います。手のひら、足の裏、腋の下の多汗症でも第1選択の治療法です。

原則として毎日、就寝前に使うことが推奨されていますが、日中の外用もできます。

塩化アルミニウム溶液は100年以上前から使われていて、アメリカでは1916年には制汗剤として文献に記載があります。

手のひら、足の裏、腋窩に使うときには、20~50%の濃度で処方されますが、顔用に使うときは10~20%と少し濃度が薄いものが処方されます。

塩化アルミニウムの外用は、皮膚や汗のタンパク質とアルミニウムイオンが反応してできる角栓が汗の出口をふさぎ続けることで、汗の分泌機能を衰えさせて発汗を抑える、と考えられています。

最新版の「原発性多汗症診療ガイドライン 2015年改訂版」では、塩化アルミニウム溶液について以下のように記載しています。

Holzleらは、ムコ多糖類と金属イオンが合成した沈殿物が上皮管腔細胞に障害を与え、表皮内汗管が閉塞するという機序で発汗の減少がおこることを示している。汗の分泌細胞自体は障害をうけないが、長年表皮内汗管がダメージを受け続けることで分泌細胞の機能的、構造的な変性がおこり廃用性萎縮の結果、分泌機能を失うとしているため、継続した外用が望ましいといえる。

廃用性萎縮というのは、使わない機能は衰えるという身体の仕組みです。

たとえば骨を折った足にギブスをしていると、骨が治るころに足がとても細くなってしまいます。これは使わない足の筋肉が衰える、廃用性萎縮の一例です。

塩化アルミニウム溶液は、汗の分泌機能が廃用性萎縮で十分に衰えるまで使い続けます。

上記のHolzleらの説は、2014年に日本の若手研究者によってエビデンスが示されました。タンパク質とアルミニウムイオンで合成する沈殿物が表皮内汗管を閉塞し、汗の分泌細胞自体には障害を与えないことが明らかにされています。

この知見は長期の塩化アルミニウム外用によって、アルミニウムが体内に蓄積するのではないか、という一部の懸念を払拭する重要なエビデンスになっています。

100年も前から行われている塩化アルミニウムの外用療法の作用機序(仕組み)が解明されるには、遺伝子解析技術と微小な世界を観察する技術の飛躍的な進歩が必要でした。

>>>科研費助成事業 研究成果報告書「多汗症に対する外用治療薬の効果と作用機序の解明」

塩化アルミニウム溶液は長く使われている薬で、効果も確認されていますが、副作用で刺激性皮膚炎を発症することがあります。

皮膚炎を発症したときは、外用の休止やステロイド軟膏の外用で炎症が治まるまで様子をみます。塩化アルミニウム溶液は、汗腺が分泌機能を失うまで継続使用することが重要なので、濃度を薄くして使用を続けることもありますが、その辺のさじ加減は主治医との相談です。

顔汗 プロバンサイン

プロバンサインは、脳からの発汗司令が汗腺細胞に伝わらないようにする薬です。

多汗症の他にも、いろいろな効能・効果があります。

【効能・効果】

下記疾患における分泌・運動亢進並びに疼痛

  • 胃・十二指腸潰瘍、胃酸過多症、幽門痙攣、胃炎、腸炎、過敏大腸症(イリタブルコロン)、膵炎、胆道ジスキネジー
  • 夜尿症または遺尿症
  • 多汗症

出典:プロ・バンサイン添付文書

人が汗をかくのは、脳の発汗中枢が発する「汗をかけ!」という司令が、交感神経を通して皮膚表面の汗腺細胞に伝えられ、汗腺細胞が汗を分泌するという仕組みになっています。

プロバンサインは、脳の司令が交感神経から汗腺細胞に伝わるところを妨害して、汗腺に汗を分泌させないようにします。交感神経の先端にあるシナプスから分泌される神経伝達物質アセチルコリンのはたらきを邪魔する薬なので、抗コリン薬ともよばれています。

全身性多汗症の第1選択になっている薬ですが、頭部・顔面多汗症では「他に治療選択肢が少ない点も踏まえ」て第1選択とされています。手のひら、足の裏、腋窩の局所多汗症では良い治療法が別にあるので、プロ・バンサインの内服療法は選択肢とされていません。

用量は大人で1回1錠、1日3~4錠となっています。

制汗効果は数時間継続し、使い慣れると服用してから効果が現れるまでの時間が読めるようになるので、いざというときの「お守り」という患者さんもいるそうです。

多汗症は精神性発汗(いわゆる冷や汗)が過剰になっている症状ですが、人が汗をかく理由は精神性発汗の他に、体温調節のための放熱が目的の温熱性発汗、辛いものなどを食べたときの味覚性発汗があります。

プロバンサインは内服薬なので、有効成分が血流にのって全身をめぐり、全身でアセチルコリンのはたらきを抑えます。プロバンサインには、精神性発汗と温熱性発汗、味覚性発汗との区別はつかないので、薬の効果があるうちはすべての発汗を抑えてしまいます。そのために喉が乾く、身体に熱がこもるといった副作用がよくあります。

付け加えると、プロバンサインには抗コリン作用だけでなく、多汗症の治療には不要な消化管運動抑制、胃液分泌抑制、ペプシン分泌抑制という薬理作用もあります。

プロバンサインは顔汗だけを抑えてくれるわけではないので、使い方や使うタイミングが問われる薬です。

顔汗に悩んでいる人は、暑いときにこそなんとかしたいと思うのですが、熱中症のリスクが高いときに汗を止めてしまうのは、ひとつ間違えば命にかかわる危険きわまりないことになりかねません。全身に作用してしまう内服薬は、ときに諸刃の剣になってしまいます。

「原発性多汗症診療ガイドライン 2015年改訂版」が「他に治療選択肢が少ない点も踏まえ」と、注釈付きで推奨している理由はここにあります。

顔汗 市販薬

塩化アルミニウム溶液もプロ・バンサインも、基本的には医師の処方箋が必要な薬です。

でも、塩化アルミニウム溶液はオドレミンという市販薬が販売されています。街の薬局で購入できますし、ネット通販でも販売しています。

濃度13%の塩化アルミニウム溶液なので、処方箋では頭部・顔面多汗症に適用される濃度ですが、オドレミンの効能・効果は「腋臭(わきが)、皮膚汗臭、制汗」となっています。

【使用上のご注意】

顔や粘膜への使用、脱毛直後や荒れたお肌、カブレやすい方の使用はお避け下さい。

と書いてありますので、顔汗に使うかどうかは自己責任で、ということになると思いますが、刺激性皮膚炎が出たときの対応や止めどきの判断などがあるので、特別に事情がなければ病院を受診して塩化アルミニウム溶液を処方してもらうことをオススメします。

プロ・バンサインは市販薬にはありませんが、個人輸入という形でネット通販で購入することができます。ネットではなかなかの人気で、在庫がないこともあります。

日本では販売されていないジェネリック医薬品の抗コリン薬プロスパスも購入できます。

ジェネリック医薬品は、特許の切れた医薬品を別のメーカーがつくっているもので、元の薬と同じ有効成分を同量含んでいます。特許料がかからない分、ジェネリック医薬品の方が安くなります。

元の薬とジェネリック医薬品は有効成分に関しては差がないものの、まったく同じというわけではありません。ジェネリック医薬品の有効成分以外の成分や製法などには、メーカー独自の工夫が凝らされていたりもします。

ではどちらが効くのかということになりますが、有効成分は同等同量なので理屈の上では差がないはずです。もちろん、実際にはどっちの方が効いたということもあるわけですが、相性みたいなものと考えたほうがいいでしょう。

どうしても病院を受診できない事情があるときは別として、プロ・バンサインは健康保険も適用されますから、病院で処方薬として出してもらう方がネットで買うよりも安いです。

抗コリン薬を使いたい人は、できれば病院を受診してプロ・バンサインを処方してもらいましょう。

まとめ

多汗症の治療でも、頭部・顔面多汗症の治療にはあまりいい薬がなく、ある程度の時間も必要な現状があります。顔汗対策としては、病院で治療をするだけでは十分ではないかもしれません。

でも、医薬部外品では顔汗専用の制汗剤が出ています。化粧下地にもなる薬用化粧品で、比較的肌にやさしいフェノールスルホン酸亜鉛という有効成分が配合されています。

もちろん、病院で処方される薬と併用することもできますし、なにより日々の顔汗対策として生活の質(QOL)の向上に役立ちます。

くわしいことはこちらの記事で書いているので、関心のある方はぜひお読み下さい。

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